やがて 雌鳥は毎日1個ずつ卵を産むようになった。その卵はニワトリの卵の1/2位の大きさで色は茶色っぽかった。その卵の重さを量ってみたら目で見るより小さく、ニワトリの卵の1/4ほどの17グラムだった。
その卵は殻が硬く、卵黄は箸でつまめる硬さであり、色は濃い黄であった。
そして毎日卵を鳥小屋から採った。
ある日、
2羽を鳥小屋から出したら、雄鳥は鳥小屋の周りで少し遊んでいたが、すぐ中へ入ってしまった。それでも日が経つにつれて、段々鳥小屋から離れて遊べるようになっていった。
しかし、雌鳥が砂浴びをしたり虫を獲って食べていても、雄鶏は横で見ているだけだった。
ある日の朝、 兄が学校へ行くためバイクのエンジンをかけたら車庫にバイクの騒音が響き、(朝から)庭で遊ばせていた雌鳥が「ギャー」と鳴きながら20メートル位離れた隣の屋根の上まで飛んでいった。チャボのくせにあんなに飛べるとは… と思った。雄鳥とは大違いだ。
雌鳥は屋根の上で目をパチクリさせていた。雄鳥は2羽で一緒にいた辺りでペシャンと座り、ただ目をパチクリさせていた。腰を抜かして動けなくなったらしい。
それからは、バイクが出て行った後に庭へ出してやるようにした。
ある日、
雄鳥が庭にある水の入っていない壊れたプールの脇で遊んでいた。
「ズル!」「ガサ!」という音が聞こえたかと思ったら、雄鳥はプールの中へ落ちていた。雄鳥はプールの中で、目をパチクリさせてキョトンと立っていた。
プール脇に置いてあったトタンの上で遊んでいて、滑って落ちたのだ!鳥なのに飛べなかったとは…!
雄鳥が あまりにも鈍いので、ビックリした。これでは雄鳥はこの先も鳥らしい生活が出来ず哀れだ。どうしたら鳥らしくなれるのだろうかと考えた。
そこで、雄鳥の訓練を始めることにした。まず飛ぶことの訓練。高いところに乗せたり、ロープの上に乗せて飛ばせようとしたが、翼を羽ばたいても着地が下手で転んだり腹を打ったりした。
結果的には訓練の効果はなく、むしろ人間を怯えるようになるだけだった。
5月の連休に 父が、狭い鳥小屋で2羽いるのはかわいそうだからと、新しい大きな鳥小屋を作った。その鳥小屋は前のよりもずっと広く、風通しもよく、日光も充分射し込んで、掃除のし易い設計であった。
【元の鳥小屋】
【新しい鳥小屋】
だが夕方、以前の鳥小屋より高いところに止まり木が作られているので、雄鳥は止まることが出来ず、鳥小屋の隅で寝ていた。
また、少し飛べるようにもなり、広いところへ出て自由に遊ぶようにもなった。やはり鳥は鳥同士で教え合う方が良いのかもしれない。
ある日いたずらで、雄鳥を家の中へ連れて隠してみた。庭に取り残された雌鳥は、相手を探しまわって不安そうに「コォー、コォー、コォー…」と鳴きだす。その声を聞いて、隠された雄鳥も鳴きかえして知らせた。
試しに雌鳥を隠しても、同じような行動をした。
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