小坪

小坪は、ふるさと … 小坪のむかしばなし …

文: 高橋 正義

海の熊ん蜂(スズメバチ)

大正時代の話です。
小坪にもたくさんいますが、日本中の浅い海で獲れる魚で、ゴンズイという魚がいます。この魚は、秋から冬にかけておいしくなる魚です。みそ汁にすると本当ににおいしいです。が、ゴンズイを有名にしているのは、そのドゲにある猛毒のせいです。
その猛毒の話しです。

大正時代の秋も深まったある日、手ぐり網漁にゴンズイが大量にかかりました。これを食べた漁師の人々が、このおいしい魚を東京に出ている人たちにも食べさせてあげたいと、大きな樽「四斗樽(しとだる)」に詰めて、東京の魚市場に送ったのです。
ところが、たまたまこのフタを開けた人が若い人で、普段は市場なんぞ出てこないゴンズイを知らない人でした。その若い人は、「なんだ、このナマズみたいな魚は!」といながら、手を突っ込んで掻き回しました。
さあ、大変です。この人は、悲鳴をあげて倒れました。その人が持ち上げた右手には、トゲをさしたゴンズイが数匹ぶら下がっていました。
その人は、すぐ病院に運ばれて行きました。その日のうちに、東京の市場から小坪の市場に、一通の電報が届きました。その電報の文面には、「ウミノクマンバチ、ニドトオクルナ」と、書かれていたそうです。

大正ロマンと言われた時代に、実際にあった話です。

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