漁師の教え

一、「大波は三つ続く」

舟を走らせるとき、方向転回するときの波の強さを見極める方法。

二、「木元(もと)、竹先(うら)

木は、元の方から割け。竹は、先の方から割け。

三、「木六、竹八」

木は、六月に切ること。竹は、八月に切ること。(旧暦)

四、「魚をとるには、山を見ろ」

魚をとる場所を見定める位置設定の方法。

五、「『サがッポー』は、『ならい』より寒い」

サがッポーとは、富士山、箱根山の方から吹く風。ならいとは北風。相模前(さがまえ)は、伊豆半島の方から吹く風。それよりやや北の方から吹くサがッポーは、最も寒いから気をつけること。

六、「天気知りたきゃあ、夜、鳴りを聞け」

漁師は、天候によって命をおとすこともある。そのため、天気を知ることは重要。昔の漁師は、夜、何度も起きて海・山の鳴りをよく聞き、明日の天気の判断をした。

七、「爪は、夜切るな」

昔は、電球も暗かった。深爪にならないために、夜、爪は切るなと言った。

八、「夏、大時化(おおしけ)のくるときは、海辺の砂がゆるむ」

夏、波打ちの際の砂がゆるんで、ふくらはぎの下まで足がめりこむことがある。そういうときの台風は大きい。

九、「鯛(たい)は網を切らないが、鰯(いわし)は網を切る」

大きな鯛でも、すくった網は切らない。弱い魚の代表の鰯は、網を締めあげるとき、大量すぎると吹き上げた勢いで、網が縦に大きく切れて(網を割る)逃がすことがある。

十、「雪疾風(ゆきばやて)に帆は張るな」

雪が降って北風が吹くときは、帆で走るな。風が巻くし櫓(ろ)を漕(こ)いでいた方が、体が暖まってよい。

十一、「雪の明日は、裸坊(はだかんぼう)の洗濯」

雪が降った次の日は、よい天気になるので、着衣を全部ぬいででも洗濯せよ。

十二、「冬の海、沖にチョウチョウ雲が上がったらすぐ逃げろ」

冬の海。南の水平線上に黒くて小さい雲が、上がっては消え上がっては消えるときは、すぐ南西の強風が吹いてくるので早く逃げろ。

十三、「冬、雨が三粒降ったら南西の風が吹く」

冬の名物、南西の風は、雨が上がった後すぐ吹くことが多い。気をつけることだ。

十四、「一つ星は動かない」

一つ星、北極星は動かないので、夜の目印となる。

十五、「櫓(ろ)は押すもんだ」

櫓漕ぎの習い初めは引いてばかりいるが、押すのに力を入れるものだ。櫓漕ぎ競争のことを押しっくらと言う。

十六、「大取りしょうより小取りしょう」

鯛、平目など大物狙いばかりするな。鰺、鰯など小魚でもたくさん獲れればお金になる。コマメに働けということ。

十七、「秋の小鳥凪(なぎ)

秋、渡り鳥が集団で海の上を飛ぶときは凪が続く。

十八、「盆の十三日、夜舟は漕ぐな」

盆の十三日の夜に舟を漕いでいると、悪霊が乗り移るからやめなさい。早く帰って祖先を迎える支度をしなさいということ。

十九、「宵の時雨(しぐれ)、明日は凪(なぎ)

秋から冬にかけて、夕方近く急に北方の空が暗くなり、ときには雨が降ることがある。それが時雨で、明日は良い天気になる。

二十、「星の瞬(またた)き」

星が瞬くときは、上空で風が吹いている証拠。その風は、やがて地上近くに降りてくる。風の方向は鳴りで知れ。瞬き具合で上空の風の強さを知れ。